東北大学が半導体製造に新手法を確立

09 1/19

 東北大学の小柳光正教授を中心とする研究グループは、集積回路とセンサー、MEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システムズ=微小電子機械部品)、バイオチップなどの異なったデバイスを一括して搭載できるシステム集積化技術(ヘテロ・インテグレーション技術)を開発した。液体の表面張力を利用して、これらのデバイスを一度に数百から数万個大型基板上に張り合わせる仕組みにより、同一基盤に複数のチップを載せたマルチチップモジュールやプリント基板を短期間かつ低コストで量産できるようになる。集積回路開発の技術革新として実用化が期待される。

 これまで東北大の小柳研究室では、LSI(大規模集積回路)ウェハーを階層化した3次元LSIおよび3次元SiP(システム・イン・パッケージ)の開発を進め、技術の確立に成功している。
今回のシステム集積化技術はその延長線上にあるもので、これらの3次元集積化技術を応用することで、大型基板上に複数のICやセンサー、レンズなどを搭載するマルチチップモジュールの作成を実現したものとなる。数百から数万個のチップを、0・5秒以下で一括して張り合わせることができ、張り合わせの位置ずれも0・4μメートルという高精度を達成している。
具体的には、3次元集積化技術として開発した技術を拡張し、液体の表面張力を利用した、高速・高精度の「自己組織化技術(セルフアセンブリー)」を用いた異種チップの大型基盤への一括実装技術と、基板上に搭載されたチップの段差を乗り越えて配線を形成する「スーパーコネクト技術」を開発した。
 同技術をもとに、小柳教授はマルチチップモジュールを試作し、「良好な結果を得られた」として、その成果を昨年12月に米国電気電子学会(IEEE)主催の国際電子デバイス会議に発表している。
現在、LSIの開発は高集積化が進み、コストや設備投資ならびに消費電力が増大する一方で、技術的に限界に近づくとともにビジネスモデルとしても行き詰まり、世界的にも対応できる会社が少なくなっている。
 今回の技術開発により、東北大は3次元LSIや3次元SiPから、マルチチップモジュールやプリント基板までを一括して作成するための基盤技術を開発した。同技術は、半導体製造の前工程、後工程を含め、今後集積回路の製造技術を大きく変える可能性を大いに秘めている。


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