日立がHDD事業から撤退

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 日立製作所は、ハードディスクドライブ(HDD)事業を同部門で世界最大手の米ウエスタンデジタル(WD)社に売却することを明らかにした。WD社は、日立の100%子会社である米日立グローバルストレージテクノロジーズ(日立GST)社を43億ドル(3440億円)相当(現金35億ドルおよびWDの株式2500万株)で買収する。これにより日立は、社会インフラ事業に注力する姿勢を改めて鮮明にしたことになる。同社は米IBM社から事業を買収して立ち上げたグローバルHDD事業を、8年で手放すこととなった。

 日立GSTは、日立が2002年に20億5千万ドルという大金を投じて米IBM社からHDD事業を買収し、自社の事業と統合して誕生した歴史を持つ。大規模な買収案件として注目されたものの、創業時から5期連続で赤字が続き、苦戦が続いた。
 そのような状況で、日立の中西宏明現社長が2005年からCEOに就任して日立GSTの建て直しに成功、直近の2011年3月期は売上高が60億300万ドル、営業利益が6億4500万ドルで黒字が続いている。ワールドワイドのシェアでは、1位のWD社、2位の米シーゲイト・テクノロジー社に続き、世界で3位となっている。
日立は、昨年11月に日立GSTがニューヨーク証券取引所もしくはNASDAQでの新規株式公開に向けて準備を開始したと発表していたが、結局はWD社への売却に落ち着いた。
 現在、日立は電力や鉄道、ITなどの社会インフラ事業に注力し、主力事業と異なる部門やグループ企業の統合や再編、売却を行っている。ほぼ同時期に設立し、昨年NECエレクトロニクスと統合した半導体のルネサステクノロジは、構造的な問題から脱却できず、大きな赤字を抱えての統合だったが、今回は、収益が安定しているうちに切り離し、世界規模の大規模買収案件の結末として、一応の体面も保てた形だ。
株式譲渡に関しては、日立が所有する日立GST社の持ち株会社であるシンガポールのヴィヴィティテクノロジーズ社の全株式を、WD社に売却する形となる。
 売却にともなう株式の取得により日立はWD社の約10%の株式を保有する筆頭株主となり、同社に取締役を2名派遣する。また、日立GSTのスティーブ・ミリガン社長兼CEOは、社長としてWDの経営陣に加わる予定となっている。

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