どうなる医療分野のIT化

第8回 (08/3/10)

発展途上のうちに標準化推進を

 医療分野のIT化の課題として「部分最適先行」があげられている。それはレセプト処理や電子カルテ、医事会計、画像処理といった業務ごとに単独で進行していることに加え、病院・医院、診療所、医薬製剤、福祉サービスなどの分野ごとにシステム名が同じでもそれぞれに合ったシステム構成やコード名などが用いられている。しかし、徐々にではあるが標準化への取り組みは動いており、着実に全体最適化へ歩んでいる。

 公共性の高いソフトを

 「病名やコード名などは標準化が進み、それらを導入するシステムが多くなっているが、システム間のデータ連携がまだスムーズに行えない」と医療関連のIT担当者は現状を指摘する。これまで構築してきたシステムを標準仕様に変更する作業とコストが意外にかかることが分かっており、中には「全面リプレースのほうが安上がり」になるものもある。
  また、操作画面なども「どの医局や病院に行っても分かるように」標準化されることになり、あるITベンダーは「診察に集中したい医師の反発が予想される」とITベンダーは危惧している。というよりは、「標準化はいいが今の使い勝手を変えたくない」というのが実際にシステムを利用する医師の本音のようだ。そのために、例えば全国の4千を超える医療機関が導入している日本医師会の「日医標準レセプトソフト」など公共性の高いソフトを利用する方法がある。
  一方で電子カルテは、標準的な共通項目部分を選択方式にし、部位などにかかる診断結果は手書き入力ができるように電子ペンとパッドを導入するなど医師の負担を少なくするというIT側からの提案も進んでいる。その中には医師の使い勝手をヒアリングした上での製品化が行われていることは当然だろう。

 ITベンダーは団結を

 ただし、医師の要望が強すぎるとどうしても“単独システム”となり部分最適が進むことになる。そこはITベンダーの腕の見せどことでもある。「標準化がもたらすの恩恵を訴えている」とあるメーカーの担当者はいう。何が変わるかを明確に説明する責任があるし、分かってもらえれば動いていくともいう。
  まだ導入率が少ない電子カルテシステムなどは今のうちに標準化作業を進めておけば、「導入時にはオープンでネットワーク化が容易なシステムが稼働する」状態が誕生する。そこにはハードもソフトも提供する側のITベンダーが認識を一にしておく必要がある。
  各種の用語の統一や標準マスターの作成・維持を担う医療情報システム開発センターや、IT側からシステムの標準化に取り組む保健医療福祉情報システム工業会(JAHIS)など成果を上げている団体も多い。特にJAHISはITベンダーの団体だけに、その動向は注目を集めている。医療現場をIT側から見つめているソフト/ハードのベンダーから、さらに強いIT化への支援策がもたらされているが、このバックボーンにどうしても府省の動きがかかわってくる。
  医療の情報化は一般的なITサービス会社はあまり顔を出せない特殊な世界になっている。その中でIT化を進めるのだから、ITベンダーがもう少し強くなり、“物申す”までにならなくてはならないようだ。

(第8回終了)

第9回 「総合力のメーカーがIT化を支援」に続く(3月末更新予定)

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