どうなる医療分野のIT化

 政府のIT政策「IT新改革戦略」の大きなポイントに、医療関連分野のIT化促進がある。医療分野のIT化は、金融、製造、官公庁といった先進他業種に比べても遜色のないレベルに達しているが、政府のIT政策内にわざわざ明記せざるを得ない状況になっているのはなぜだろうか。連載では医療関連分野のIT化を探りながらその謎を追ってみる。

第1回 (08/2/26)

情報化グランドデザインが始動

 IT化の進め方が鍵に

 厚生労働省は、今年3月末にIT新改革戦略を受けて初めてIT化施策の具体項目「医療・健康・介護・福祉分野の情報化グランドデザイン」を公表した。この基本的な取組みは、@総合的施策の着実な実施A利用者の視点の重視B真に必要なIT化の推進C個人情報の保護と国民の選択の尊重D官民の役割分担―という5項目にまとまとめられる。これらを実現するためにどのようにIT化を進めていくかがポイントになってくる。
 厚労省では「国民や医療機関のニーズといった点もIT化で考慮する必要がある」との見解を示している。国民のニーズとしては、自分の健診情報や診療情報を日常の健康管理に活用し医療機関などに提供することで安心して質の高いサービスを効率的に受けたいというもの。
 一方、医療機関からすると、費用対効果の高いITの導入で質の高いサービスを効率的に提供したいとの思いがある。また、保険者側では、レセプトのオンライン化で医療保険事務の効率化と保険者機能の効果的な発揮などを求めているようだ。
 医療分野でIT化を進めるにあたっての課題は何だろうか。まずは「医療機関、介護事業者、健診事業者などが情報を連携するため、用語・コード、項目、記述形式などの標準化、項目の定義が必要」ということになる。これは切実な問題として医療関係者の間に横たわっている。「様々な点で標準化が一番難しい」とITに携わる医療関係者は指摘する。
 各病院内の医局ごとにIT化が進んでいるのが現状で、「1つの病院内でもデータを連携するには時間とコストがかかる」のだ。レセプト会計処理などは対象項目の標準化が進みつつあるとはいえ、対処すべき問題は山積している。
 ほかにIT化の課題として、機器間や事業者間、分野間における情報の相互運用性の確保、医療知識基盤データベースの整備、情報連携に必要なセキュリティ基準の明確化など、健康情報管理データベースの整備、さらに国民、医療機関、介護事業者、保険者などの合意形成といった点が、「まだ解決の端緒についたばかり」だ。
 情報化グランドデザインは、概ね5年間のアクションプランとなるが、2008年度までは各項目への取り組みを行い、2010年にはようやくその試みが具体的に動き始めるという。

(第1回終了)

第2回 「個別導入でIT化に温度差も」

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