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輝けITベンチャー


第9回
Lunascape
近藤社長の写真
近藤秀和代表取締役CEO
  ブラウザーの世界は、ウインドウズOSへのバンドル戦略によってマイクロソフトのインターネットエクスプローラー(IE)が最大時で9割超のシェアを持つほどの独占状態が続いていた。ところがここにきて、徐々にファイヤーフォックスやスレイプニールなどの新勢力がIEのシェアを奪いつつある。
 その新勢力の一端を担っているのが、国産の無償Webブラウザー「Lunascape(ルナスケープ)」だ。

 ソフトウェア・プロダクト・オブ・ザ・イヤー2005を受賞

 ルナスケープは、IEにプラグインするタブ型のWebブラウザーだ。初期バージョンは近藤秀和代表取締役兼CEOが早稲田大学の院生だった頃に、IEの「お気に入り」を効率的に管理するためのソフトとして開発したものだった。ソフトのダウンロードサイト「窓の杜」にフリーソフトとして公開すると、瞬く間に多くのユーザーから支持され、その後ビジネス展開するために2004年に同名の専門会社を立ち上げた。翌年の2005年には、情報処理推進機構(IPA)の「ソフトウェア・プロダクト・オブ・ザ・イヤー」の最優秀賞を獲得した。現在のダウンロード数は150万超、ユーザー数は約86万人で、「IE7の発表後も順調に増え続けている」(近藤氏)という。先日ヤフーとの提携によって「Yahoo!オークション専用ブラウザー」を発表したが、これによって今まで届きにくかった一般のライトユーザー層の取り込みも期待できる。

 使いやすさを追求

ダウンロードサイトへ ルナスケープの特徴は、使用頻度による自動ソート、お気に入りに対するコメント入力や色分けなどに代表される“お気に入りの管理しやすさ”に始まり、ヤフー、googleなどのWeb検索に加えてamazon.comの本・CD検索や楽天の商品検索など100以上のエンジンによる“検索機能”、“ブラウザーデザインの切り替え”、“マウス操作への機能割り当て”、ニュースサイトやブログから配信されるRSSフィードの見出しを小窓に繰り返しプッシュ表示する“ティッカー”などさまざまだ。最新版では、RSSフィードの更新情報をポップアップ通知する機能を実装している。

 ワンクリックで切り替えられるブログモードでは、登録してあるお気に入りのブログを更新順にチェックできる。デフォルトで「女性タレント」「男性タレント」「お笑いタレント」「ビジネス」「スポーツ選手」「ミスキャン」「話題のブログ」「ムービーブログ」の8ジャンルを設定、もちろんジャンルはユーザーが任意で追加・削除することも可能だ。ブログへのトラックバック送信やコメントを投稿する機能も実装している。

 エクステンション(拡張機能)はファイヤーフォックスほど豊富ではないが、近藤社長は「たくさん機能があっても使いこなせなければ意味がない」と割り切っている。ルナスケープは「Webで利用できるロングテールのコンテンツ(サービス)やエクステンションをある程度まとめ、ユーザーの使いやすい形にカスタマイズして提供している」ところが特徴だ。

 Web2.0ベンチャー

 同社はまさにWeb2.0時代を象徴するベンチャー企業といえるだろう。ブラウザーはオリジナルだが、機能拡張の面ではWebで公開されているサービスを取り込むことで、コストをかけずにサービスを拡張できる。ソフトの性質上、サーバーサイドの開発コストがかからない。ちなみに収益源はブラウザーのOEM提供と、サイトへのトラフィック誘導などの広告収入だ。

 近藤社長は、「もう2・3年すると、それぞれが使うブラウザーはユニーク(独自)な存在になる」という。つまり、ブラウザーは“与えられたもの”ではなくなり、ユーザーがさまざまなカスタマイズを加え、各者各様のWebとのインターフェースを構築するという流れがやってくるという見解だ。

 起業から2年が過ぎ、社員も増えて新オフィスにも移転した。「だいぶ会社としての体制が整ってきた」という。当面の目標は、「国内のブラウザーのシェア10%を獲得すること」だ。ちなみにこの数値は、某大手新聞の発行部数と同じになる。「それだけ多くの人の目に触れれば相当の影響力がありますよね」と笑顔を見せる。



《企業データ》
Lunascape
04年8月設立
資本金1億2000万円
代表取締役兼CEO 近藤 秀和
東京都港区麻布永坂町1番地
http://www.lunascape.jp/