情報システムプロデューサ

16 9/19

 大学教授などの有識者とIT関連の実務者で構成する情報システム学会が、「情報システムプロデューサ育成が我が国の急務」という提言を行った。
  同学会は以前の提言で、コンピューター活用が不十分な日本の組織の現状を踏まえ、利用組織の中で情報システム関連組織を変革し、「情報システムプロデューサ」という人材を配置する必要があると問題を提起した。今回それを受けて情報システムプロデューサに要求される役割と資質、育成方法について言及している。
  日本の経営者は、ITを経営の道具と見る傾向が強く、情報システム部門はコストセンターに位置付けられ、優秀な人材は情シス部門を敬遠する。システム構築をプロジェクト管理ごと外注し、運用段階に入っても利用組織がシステムの主導権を握れずに社内のIT要員もモチベーションが低い。そこで、目指すべき情報システムを実現するため、外部に全面的に依存するプロジェクト運営方式からの脱却がまず必須となり、それをまとめるのが情報システムプロデューサの役割―とのことだ。
  参考として挙げるのは、部下はわずかだが、担当する車種について全社横断的に責任を持つトヨタの「車種別主査制度」や、ITだけでなく事業のビジネスプロセス構築から運用まで責任を持つ米国の「ビジネスアナリスト」だ。案件が情報システムプロデューサ/事業部単位となると、ITベンダーの接点も情シス部門から事業部門へと変わり、パートナーとして認められるためにはシステムの話を越えたユーザーの業務内容や流れに精通する必要があり、ベンダー側の人材の底上げにもなる。
  ただIT業界発信、加えて理想や正論が先に立つ学会発となると、なかなか実務の最前線にいる経営層には響かないだろう。まずは、情報システムプロデューサの必要性を経営層に腹落ちさせるプロデューサが一番必要なのかもしれない。  (I)