国産車載OSの開発が活発化

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 昨今の組込み領域の話題といえはIoT一色だが、従来の本筋である自動車分野において、国産車載OS(ベーシック・ソフトウェア=BSW)周辺の動きが活発化している。
  現在、国内の車載BSW開発には3つの勢力が存在する。SCSKが豆蔵、キャッツ、イーソルなどと組みBSWをリリースしているが、そこにSRAが参加した。また、TOPPERSプロジェクトが開発したオープンソースOSをベースに、名古屋大学での産学共同研究によって開発したBSWの成果を移管する形で昨年APTJが発足、富士ソフトや東海ソフトなどが出資しているが、このたび富士ソフトが増資し、新たにキヤノンソフトウェアも出資した。さらに今月、デンソーが、イーソル、NEC通信システムとの合弁で、BSW開発会社を設立している。
  仕様はそれぞれ、AUTOSAR(オートザー)に準拠している。AUTOSARには、世界の主要自動車メーカーをはじめ、車載電装部品メーカー、半導体メーカー、ソフトベンダーが参加し、車載システム(ECU)に搭載されるBSWの仕様を策定し、事実上の世界標準となっている。ただしAUTOSARは、元々欧州自動車メーカーが発足し、後にトヨタやフォード、GEがコアメンバーとして参加したということで欧州色が強い。つまり、自動車の組込みソフト領域は、欧州が主導権を握っている状況にある。このままでは、自動運転や電気自動車などモノ作りの手法自体が異なってくるなか、携帯電話や家電に続いて自動車までもという話になりかねない。
  もちろん先述したソフト会社は、新しいBSWベースの大規模組込みソフト開発を狙っている。携帯電話の時は膨大な開発量が人月ビジネスの方向に動き、結果しぼんだ。今度は付加価値・効率性を兼ね備えた車載OSを提供してメーカーとよい関係を築き、自動車・ITともに産業の発展につなげてほしい。  (I)