業界団体首脳インタビュー JISA浜口友一会長
「CIOに対するユーザーの関心が高まっている」

 昨年6月会長に就任し、今年2期目を迎える情報サービス産業協会(JISA)の浜口友一会長(NTTデータ相談役)に、IT業界の動向について聞いた。

2008 4/30

 ――ソフト業界では技術者不足が深刻化していますが、この状態はしばらく続くのでしょうか。

浜口会長
浜口会長


  浜口 ここ数年、景気拡大とともに都市銀を中心とした大型IT投資が続いてきました。現在もその恩恵で開発案件は多く、将来的な技術者不足を心配する声も多く上がっています。しかし、年内にも都市銀の大型案件はひと通り収束するので、技術者不足は解消の方向にあると見ています。


  ――逆に、ITバブル崩壊のような時代が再び訪れるのでしょうか。


  浜口 銀行や公共については、ある程度受注が減ることが予想されますが、民需に関しては減速の心配はないと考えています。例えば、企業が新しい料金プランを設定することになると、自動的にその周辺のシステムについての案件が発生するというように、企業戦略とITは切っても切れない関係になっていますから、ソフト市場自体は間違いなく拡大の方向にあるといえるでしょう。


  ――それだけユーザー企業のITについての関心が高まってきているということでしょうか。


  浜口 実は、最近ユーザー企業が出席するような、いくつかの学会や協会の会合に出席する機会があったのですが、ここでCIOへの関心の高まりに驚きました。先ほどの例のように、現在企業は何か新しいアクションを起こす際には、必ずシステムを決める必要があります。そうなると、効率的な投資のためには優秀なCIOの存在が不可欠になるという考えに行き着くわけです。


  ――米国などでは、いち早くITを事業戦略の柱に据え、ITによって差別化を図るユーザー企業が多いと聞きますが。


  浜口 国内でそれを実践している企業はまだ一部ですが、CIOに関心が高まっているということは、経営戦略におけるITの重要さに気づき始めた企業が増えてきているということではないでしょうか。優秀なCIOは、ベンダー側のこともよく理解しているので、ベンダー側の開発環境の向上にもつながるので歓迎すべきことです。


  ――先日大手ベンダーが集まり「発注者ビュー」を公開しましたが、この意義は。


  浜口 開発環境を悪化させる大きな原因が、要件定義のあいまいさにあるといわれています。ユーザーとベンダーがしっかりと情報共有できていれば、手戻しも減り開発環境の向上につながります。だからこそ、ベンダーのノウハウを結集した発注者ビューの取り組みには大きな成果が期待されるのです。


  ――ほかに必要な要素は。


浜口 要件と同様に重要となるのが見積もりです。今後、画面や帳票、トランザクションなどの数値から、修正が入った場合の取り決めまでを含む定量的な見積もりが行えるような手法の開発が望まれます。これは、ユーザーとベンダー間だけでなく、パートナー関係にあるベンダー同士でも必要となるものです。


――その一方で、情報システムの信頼性が社会的に問題視される傾向にあるようですが。


浜口 システム開発におけるミスを無くしていくことは、今後も業界として精進していく必要はあると思います。しかし、100%のシステムは存在しないというのが現実ですから、ミスをなくす努力を行う一方で、前もってトラブルによるリスクを想定したシステム開発を進めることが、今できる何より重要なことではないでしょうか。


【団体データ】
情報サービス産業協会
http://www.jisa.or.jp/

NTTデータ
http://www.nttdata.co.jp/